| ■作者 / サークル名: | 湿気た鵜と巣 |
| ■配信開始日: | 2025年06月03日 |
キャットファイトなふたり(軽量版) 試し読み
試し読 み →キャットファイトなふたり(軽量版) 詳細情報
囚われのエージェント
調査のために潜入した先で洗脳を受け、日ごと夜ごとに見世物として晒されるエージェントのKとYのふたりを描いたイラスト集です
***
銀河の片隅にある、表向きは平和な惑星。
しかしその地下には、権力者たちの密かな娯楽――違法闘技場が広がっていた。
賭けと快楽を求める者たちが集い、夜ごと繰り広げられる熱戦を見守る。
そのリングの中央に、二つの影があった。
「……またこれか」
エージェントのYが微かに息を吐く。
対する相方のエージェントKも、わずかに肩をすくめた。
「いい加減、飽きてきたわ」
「それはこっちのセリフよ」
周囲の観客からは歓声が飛ぶ。
「今夜もエキシビジョンマッチだ!」
「いいぞ、もっとやれ!」
二人は互いに向かい合い、静かに構えを取った。
捕らえられたエージェント。
数日前、二人はこの惑星で違法闘技場の情報を探っていた。
しかし、潜入中に思わぬ手違いでKが敵に捕まり、Yもその救出の際に囚われてしまう。
意識を取り戻した時、二人は奇妙な感覚に包まれていた。
記憶はある。状況も理解している。
だが――
「お前の目の前にいるのは敵だ……お前は闘わなければならない……」
脳内に響く囁き。
理性では何かがおかしいと分かるのに、身体はリングに立ち、相手を組み伏せようとする。
彼女たちは、敵組織による暗示を受けていた。
それは決して相手を傷つけるような暴力ではなく、ただ取っ組み合いをさせるものだった。
目的は、観客の娯楽。
彼女たちは、地下闘技場のエキシビジョンマッチとして利用されていたのだ。
夜ごとの演目
ルールは単純だった。
・殴る、蹴るなどの直接的な暴力は禁止。
・関節技は極め切らず、見せ場を作る程度。
・寝技はあり。
・ただひたすらに組み合い、相手を押さえつける。
・決着は、観客が「満足」したタイミングで決まる。
彼女たちは毎晩リングに立ち、身体をぶつけ合いながら闘いを演じる。
それが「当然のこと」だと、無意識のうちに信じ込まされていた。
――夜の闘技が終わったあと。
リングの熱気と喧騒が静まり、観客がひとりまたひとりと姿を消していく頃、二人には別の「舞台」が待っていた。
それは、リング裏の特別室。
高位観客――闘技場を支援する資産家、政治家、地下経済の実力者たち――だけに与えられた秘密の空間だった。
金属の扉が静かに開くと、YとKはためらう様子もなく、静かにその中へ入っていく。
自覚なき「任務」
「……お呼びですね」
Yはわずかに頭を下げる。
「今夜はあたしも一緒に、ってこと?」
Kが軽く笑みを浮かべる。
彼女たちの表情に戸惑いや抵抗の影はない。
まるで、そこに立つことが“任務の一環”であるかのように。
それが、“彼ら”の施した意識操作だった。
――エキシビジョン後、個別または二人同時に「応接」に応じるのは当然のこと。
――敬意ある振る舞いは、礼節の証。
――相手の要望を受け入れるのは、義務とされている。
彼女たちの中には確かに違和感があった。
ほんのわずかに、心のどこかが「これは変だ」と警鐘を鳴らしていた。
けれどその声は、別の意識によってすぐにかき消される。
「ここでは、そうするのが当然」
そう思い込まされている。
“もてなし”という名の命令
応接室では、整えられた衣装、音楽、照明が用意されていた。
それはまるで、豪奢な社交場のようでありながら、どこか異様な仮面舞踏会のようでもあった。
KとYは、求められるままに微笑み、軽く振る舞い、時に柔らかな言葉を交わす。
観客席にいた時よりも、もっと近く、もっと“個人的”に――。
彼女たちはそのすべてを「任務の一部」「自分たちの役割」として、疑問を抱かずにこなしていた。
心の奥に残るかすかな違和感は、
――疲労のせい。
――誤差のようなもの。
そう認識させられていた。
仮面の下で
ふと、Yが手元のグラスを見つめた。
「……これ、何度も同じ味がするのよね」
Kは横で苦笑する。
「似たような夜が続いてるせいかもね」
ほんの一瞬、言葉が交わされる。
それだけで、かすかな“ひび”が入る。
けれど、そのひびは深まることなく、また仮面が覆い隠す。
彼女たちはまた、微笑む。
そうするように“設計されて”いるから。
夜明けの予感
ただ、すべてがそのままで終わるわけではない。
どこかで、ほんのわずかな“誤差”が積み重なっている。
互いの無言の気付き。
繰り返される既視感。
ぬぐい切れない倦怠。
やがてそれは、暗示のプログラムそのものを揺るがす“ノイズ”になる。
この仮面の夜が、いつか終わりを迎える日が来ることを――
誰よりも、彼女たち自身が、心のどこかで感じ始めていた。

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